江戸時代、北海道・東北・北陸と西日本を結んだ西廻り航路は経済の大動脈であり、この航路を往来した商船は「北前船」と呼ばれました。北前船は、米をはじめとした物資の輸送から発展し、船主自身が寄港地で仕入れた多種多様な商品を、別の寄港地で販売する買い積み方式により利益をあげたことから「動く総合商社」と形容されています。日本海や瀬戸内海沿岸に残る数多くの寄港地・船主集落は、北前船の壮大な世界を今に伝えています。
坂越は波穏やかな天然の良港であったことから、古くから廻船業で繁栄してきました。特に江戸時代になると、西廻り航路の発展とともに北前船をはじめとする諸国の廻船の寄港地として大いに賑わいを見せました。坂越には、近世海運業の隆盛を今に伝える独特の歴史文化が色濃く残されており、平成30（2018）年には、日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間～北前船寄港地・船主集落～」の構成文化財として、坂越の町並み・生島・旧坂越浦会所・黒崎墓所・大避神社の奉納物・坂越の船祭・船賃銀定法の７件が追加認定されています。